今日の職場は、まるで鉛のように重苦しい空気が漂っていた。原因はただ一つ、店長の機嫌がすこぶる悪かったからだ。
小売業の現場はチームプレイだ。だからこそ、現場のトップである店長の感情の起伏は、ダイレクトに店舗全体の空気を左右する。朝礼の段階で店長が眉間に皺を寄せ、不機嫌なオーラを放っていると、私たちスタッフは「今日は地雷を踏まないようにしよう」と一斉に防御態勢に入る。
上司の顔色をうかがいながら仕事をするのは、本当に骨が折れる。例えば、お客様からのちょっとした要望や、商品の欠品など、すぐに報告すべき事案が発生しても、「今伝えたら、八つ当たりされるんじゃないか」と躊躇してしまうのだ。事務所の入り口からそっと様子を伺い、話しかけるタイミングを見計らう。そんな本来の業務とは全く関係のない「探り合い」に、どれほどの無駄なエネルギーと神経を費やしていることか。
本来、私たちが一番に顔色をうかがうべきなのは「お客様」のはずだ。どうすれば快適に買い物をしてもらえるかを考えるのが仕事なのに、気づけば「どうすれば店長を怒らせないか」が最優先事項になってしまっている。このいびつな構造が、現場の疲弊をさらに加速させているのは間違いない。
夕方、店長が退勤した瞬間、バックヤードにいた全員がフーッと安堵のため息をついたのが少しおかしかった。まるで、厳しい先生が教室から出て行った後の学生のようだ。
最近よく眺めている転職情報誌の、「心理的安全性のある職場」という言葉に強く惹かれてしまう。上司の機嫌という不安定なものに振り回されず、仕事そのものにまっすぐ向き合える環境。それが、今の私にとって一番の理想なのかもしれない。




